みんなの「親への手紙」 007 母親は、いない

お名前 あの日のままのオルゴール
性別 女
年齢 45歳
職業 家事手伝い

 母へ。
 あんたはいいな。
 私が寒いって泣いてたときに、こたつでゴロゴロして。
 私は歩行器で、手をガサガサにしてたらしいよね。
 
 見かねたお祖父ちゃんが引き取っても、様子も見に来ない。
 どういう神経なの。
 熱が出ようとどうしようと可愛くないから来ないって?
 ねえ、教えてよ。

 たまに遊びに来てもただのオモチャでお祖母ちゃんお祖父ちゃんに預けるだけ。
 いいとこ取りだよね。
 お年玉は当たり前のようにとってくし。

 私に飽きて出ていったんでしょ?
 また三人ぼっちになったよ。
 おかげで我慢になれた。

 言ってたじゃん。
 このまま連れてくと危険だから、泣く泣く安全なお祖父ちゃんお祖母ちゃんに預けたって。
 罪悪感から円形脱毛症にもなったって。
 ふざけんな。
 知らねーよ。

 帰ってきて早々「二万稼いでこい」って言ったの、誰?
 私を汚すことでお金を得てさ。
 おかげで売春斡旋のニュース見ても、なーんも感じないよ。
 挙げ句、検査入院になったときも、お金に振り回されてたあんたは、お見舞いに来ても「お父さんお母さんと呼ばないで。その方が役所からお金がもらえるから」。
 ちゅうボーにはムリゲーだよ。

 それからも、私って子どもはいないことになってたよね。
 そのたびに私は隠れててさ、その時あんたは美味しいもの食べて笑ってたよね。
 残念だけど、おかげで病気は悪化。
 毎日、過呼吸。
 それでも、「お姉さん」とか呼んでた私ってエラーい。

 お父さんはもう、「お父さんて呼んでいい」とか言ってたけど、呼べなかったよ。
 呼べば、「母さんは誰?」になるからね。
 私が家出したときも、「私、知らね。責任はおとーさんにあるとかで知りません、そんな子」だったよね。

 子どもがいないから、運動会も参観日も縁がないから来ないよね?
 「お父さんと生き方が違うんだよね。おまえならわかってくれるよね?」の繰り返し。

 挙げ句、若い男に入れあげて、また出てって。
 ね、まわりを傷つけて得てる幸せは、どんな感じ?
 私が自分の場所見つけると、そこにドカドカ踏み込むの。
 やめてくんない?
 いい母親ヅラしてさ。

 すべてばらしてもいいかな?
 どんな顔して私の首閉めたり、泣いたふりして私を責めるのか。
 見てみたいよ。

 私は居場所をなくすんだよ。
 あんたがしゃしゃり出るほど。
「私のこと、おまえはわかってくれるよね?
 わかるか、ばーか。

 介護?
 やめときな。
 同じことしそうだから。

 あと、今の男とうまくいかないたびに、私に文句言われても困るし、結婚に対して嫌悪感と絶望しかないから。
 家庭番組、観れなくなったの、確実にあんたのせい。
 お祖母ちゃんと花札してなきゃ、狂ってたよ。

 わからなかったよ。
 母親なんて、いないってこと。
 私は絶対、あんたより幸せになるから。
 殺してもいいなら、介護してやるよ。
 あんたのふざけた人生に付き合うには、正気じゃ無理ってわかったから。


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