みんなの「親への手紙」 037 もう、傷つきたくはないから


★名前 ユーリ
★性別 女性
★年齢 51
★職業 パート


 お母さん。
 あなたに聞きたいことが、一つだけあります。
 あなたは、私を愛してますか?
 それとも、本当は愛している演技を続けているだけなのでしょうか?

 お父さんがお酒を飲んで暴れたあの日。
 「死ね」と私の首を絞めたあの日。
 あなたは私の身をかばい、代わりに叩かれ、警察に必死に助けを求めた。
 一緒に観た映画のヒロインのように、勇気を出して戦おうと手を握りしめた。

 同じような境遇にある仲間たちのために立ち上がった私を応援し、励まし、イベントを手伝ったり観に来てくれたりもしましたね。
 うれしかった。

 でも、徐々に感じてゆく違和感。
 イベントに来たお客さんに、あなたはいつもこう言ってましたね。

「私の娘を見てください。
 あのステージに立っている娘を。
 娘はとてもつらい思いをしました。
 でも今は、がんばって、このような素晴らしい活動をしています」

 そして、どのように自分が私を育てたかの苦労話が始まる。
 どんなときも、いつだって、どこからともなく声が聞こえる。

見て。見て。この子を見て。
 私にそっくりな、私が育てたこの子を見て」

 ねえ、お母さん。
 結局は、自分の自慢なの?
 私はあなたにとって、その身を飾る綺麗なアクセサリーの一つにすぎないの?

 私の存在そのものが誇らしいんじゃなくて、他人様に自慢できるような素晴らしい娘を育てた自分自身が誇らしかっただけなんじゃないの?

 だって、あなたが「素晴らしい活動ではない」と判断したイベントには、あなたは一切顔を見せないし、関わらない。
 声優として舞台に立ったあの時も、家族が来ないのは私一人だけだった。

 そう言えば、昔からそうだったよね、いつも。
 それに気づいた時、私はあなたを一切のイベントに呼ぶのをやめました。
 もう、傷つきたくはないから。

 お母さん、私のこと好き?
 本当は?
 本当は?
 本当は?

 ねえ、もう一度だけ聞かせて。
 お母さん。
 あなたは、私を愛してますか?


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